| ホーム | 環境技術情報 | イベント情報 | "It's EV.com"ってなに? | リンク | メンバー紹介 | 掲示板 | お問い合わせ |
 
PEV用電源

PEV用電源の要求性能

a 高搭載エネルギー

電気自動車の第一の課題は、1回の充電での走行距離を延ばすことにある。1回当たりの充電で走行できる距離がどれくらいならば、実用的かという論議に対しては種々の意見がありまだ結論は出ていない。しかし、これまで行われた各国での実証テストで100〜200km走行できる車両に対してその実用性が評価されている。この距離が実用的な電気自動車の目安であるとし、たとえば1tクラスの車両を例にあげた場合、このクラスのエネルギー消費はほぼ200Wh-km-1必要になる。したがって20〜40kWh程度の搭載エネルギーが必要である。このエネルギーを搭載したときの条件で電源としての適不適が決まる。すなわち車両重量が同じクラスのガソリン車と比較して、電気自動車の重量が何%以下の増加に抑えられるかである。車両重量がガソリン車の2倍になっては、実用的な車両になりえない。

必要な搭載エネルギーを得るためには、電源の体積や容量も重要な因子になる。電気自動車の電源搭載方法には車室内搭載、床下搭載、トランクルーム内搭載などがある。電源の体積が増加することは、荷室容量の減少、搭載のための車両増加などを余儀なくされるため、電源重量と同様、自動車メーカーの電源に対する体積の縮小の要望は強い。搭載体積は同時に冷却のためのスペースを含むため発熱が少なく、より冷却性の高い電源が要求される。エネルギー密度は、100〜200kmの実用走行を考えると60 Wh-kg-1程度は必要である。

b 高出力

一般道路でガソリン車との混合交通を可能にすることが電気自動車の必要条件である。そのために必要な電池出力が決まる。自動車が高い出力を必要とするのは主に加速時と高速走行時である。高速での加速は特に高出力が必要となる。一般的に、1〜2tクラスの電気自動車では、通常40〜60kWに出力が設定されており、この出力が前記条件をほぼ満たす値と考えられる。電源はこれに対応すべく出力が出せる設計をしなければならない。このため200 W-kg-1程度の出力特性が要望される。

c 高回生エネルギー受入れ性

ブレーキ時のエネルギーを電力として回収できるのは電気自動車の大きな特徴である。たとえば、電池に100Ahの容量があるときに発進停止の多い市街地走行を電池が空になるまで走行したとする。回生がない場合は走れなくなるまでに100Ahが電池から出ることになるが、回生がある場合、実際に電池から出た見かけの電気量は110〜120Ahになる。
すなわち10〜20%走行距離が伸びることになる。しかし、一般的にブレーキ時の加速度(減速度)は加速時よりも高いため、回生電力は加速時に必要な電力よりも大きい。出力電力以上に回生のための入力電力は大きい。

PEV用電源の種類

現在、PEV用に実用および開発されている主な電源系は、作動温度で2つに分けられる。室温作動型には、鉛蓄電池(Pb-Ac)、ニッケルカドミウム蓄電池(Ni-Cd)、ニッケル水素蓄電池(Ni-MH)、正極にマンガンスピネルを用いたリチウムイオン二次電池(Li-ion)、リチウムポリマー二次電池(Li-polymer)、空気亜鉛電池(Zn-air)がある。高温作動型には、ナトリウム硫黄二次電池(Na-S)、ナトリウム塩化ニッケル二次電池(Na-NiCl2)である。

各種電池系の諸特性を表1に表した。充電方法は、一般的には深夜電力が利用されるので6〜8時間充電が行われる。Zn-Airの場合には、メカニカルチャージといわれるZn負極の消耗とともに負極を取り替える方法が行われる。燃料電池としては60〜70℃で作動するPE(polymer electrolyte)燃料電池が利用されている。



出展
書名 電気自動車ハンドブック
著者 電気自動車ハンドブック編集委員会 編
出版 丸善株式会社 (URL http://www.maruzen.co.jp)