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DCDCコンバータ効率


第4回 DCDCコンバータ効率

EVやHEVでは、補器電源用に通常のガソリン車の12V部品を使用している。一方駆動用の電源は、大出力のため高圧としており、このため、降圧のDCDCコンバータが一般的に適用されてきた。最近はFCVでの駆動電源バッテリへの充電出力での対応をきっかけに、車輌駆動電源としての検討がされるようになった。これは高電圧化により、駆動用モータ設計の自由度をあげて、車輌性能とパワトレーン車載スペースとの両立が目的である。また、バッテリ側を低電圧にして、セル数を減らしコストを下げる狙いもある。しかし電力効率的には、数パーセントのロスが発生し、部品も増えるため、車輌側の軽量化やレイアウト、コストのメリットを考えて採用する必要がある。ここでは駆動用電源部分としての、DCDCの昇降圧機能部分の効率について解説する。

  駆動系への適用を前提で考えると、最大出力よりも、定常出力での低損失設計が重要となる。
  DCDCコンバータの損失は図1のように分解できる。以下各項目について順に説明する。





1.半導体損失―定常損失
  半導体は、スイッチングの時、オンでも少し抵抗があるので、オン抵抗をRon、出力電流をIon とすれば、損失 Ion2*Ron が定常的に発生する。またオフの時にも少し電流が流れるので、漏れ電流をIl、 作動電圧をVzとすると、損失 Il*Vz が発生する。
  大出力時は、Ionが大きいので、Ion2*Ron がほとんど。また待期時は、Ion=0 となるので、Il*Vzのみとなる。
  これらは、作動電圧と出力によって、半導体材料特性から決定される。材料が同じ時は、耐電圧をあげるほど、オン抵抗は増大する。整流回路をpn接合型ダイオードからMOSFETやSBDに変えるのは、オン抵抗を下げる目的である。
半導体材料でSiCが実用化されれば、大きな効果が期待できる。
2. 半導体損失―スイッチング損失
  スイッチング中の損失は、スイッチングの電圧と電流の積を時間積分となる。
したがって、スイッチングの時間を短くして(高速のスイッチング素子を使用する)損失を減らせる。またスイッチング時に、スイッチにかかる電圧または電流を0に保つなどの制御を行って、電圧電流の波形を動的に制御し、損失を減らすことが行われ、共振型コンバータやZVS−PWMコンバータなど各種考案されている。




  スイッチングには電圧サージや電流サージを伴い、耐電圧への影響や、ノイズへの影響も大きい。ターンオンサージにはゼロ電圧スイッチングが有効だが、ターンオフサージに対しては各種スナバ回路が用いられる。最近ではスイッチング制御でサージを抑え、スナバを廃止している。



3.トランスおよびチョークコイル損失には銅損と鉄損がある。
車載用では重量、コスト、容積の制約が大きいため、コイルを小型化できる高周波スイッチングが適用される。スイッチング損失は高周波で増加するために、MOSFETで100−200kHz、IGBTでは10−20kHzが一般につかわれる。
  コイルの鉄損は磁気ヒステリシスに起因するため、高周波で損失増大する。また小型化により、熱容量、放熱面積が減少するので、耐熱性も小型化の限界になる。
  銅損は、コイル線径と巻数で決まる。コイル要求特性と出力より最小の線径をもとめ、巻数を増やしながら銅損と鉄損の和が最小になるように周波数とコイル諸元を選定する。このときに鉄芯は磁気飽和で損失が増え始めるぎりぎりまで小型化するのが一般的である。
  電力用につかわれる磁気ヒステリシスの小さいアモルファスの磁芯は、1テスラ程度から飽和が始まり、小型化が難しい割に、コスト、振動面のデメリットが大きく、車両用としては使われない。
  また車輌の出力要求は定常に対し最大は5−10倍と広いため、使用条件の設定も効率に影響がおおきい。
4.その他の損失要因は絶対値としては小さい。とくに低出力での連続作動時以外は無視できると思う。

以上まとめると、半導体、磁性体の材料技術および、スイッチング制御技術がユニットの性能を決めると言えるが、車輌として使用条件の精確な設定も効率化、小型化のうえで重要である。