第2回 電気二重層キャパシタの容量上限の推定
キャパシタはバッテリの容量を越えるか?
リチウムイオンバッテリとの使い分けはどうなっていくだろうか?
電気二重層キャパシタは近年性能向上によって、FCVや商用車のパワーアシストに適用され始めた。今後の車輌適用
拡大のポイントは、容量を増やすためには、大きさやコストがどの程度増えるかを、技術進歩を見込んで、どう推定するか
である。
まず、キャパシタの利点は、内部抵抗が低く 大電流の繰り返し使用に強いことである。これを生かして、パワーピークを
削るようなシステム設計が可能となり、パワー源のサイズを小型化することでシステムコストを削減できる理屈である。
バッテリを1次電源とするシステムへの適用では、安価な低出力高容量のバッテリとの組み合わせが考えられる。
蓄電要素として使用する場合は、急速充電で利便性を追求するか、出力に対して入力を極端に小さくせざるを得ない
システムなどにその特性を生かす必要がある。
しかし、キャパシタシステムもコストがかなりかかるので、パワー源の大型化コストがFCVや専用エンジン開発ほどには高くないシステム適用はコスト評価が重要になる。
キャパシタは単セル耐電圧が3V程度であるので、多数のセルを直列でシステムを組んで、充電、放電双方に DCDC
コンバータをおき、セルごとの電圧を2.5V−1.0V程度に均等制御して使用するのが一般的であろう。
さて、電気2重層キャパシタの原理からその容量上限を推定してみよう。
電気2重層は電解液に電界を与えると電解液中のイオンがそれぞれ正極と負極とにわかれて吸い寄せられる。この時
例えば陽イオン(Li+など)は陰極(炭素など)にくっついて整列する。
はてな?陰極には自由電子がいるから、これとむすびついて、金属が析出しないだろうか。これは、イオンが電子をもらう
ためには、それなりのエネルギが必要で、ある電圧がかかるまでは、イオンのまま整列して待っていると考えられている。
Liイオンバッテリの場合ではさらに電圧をあげていくと、炭素結晶の中にイオンのままもぐりこむインターカーレーションに
進むのだが、電気2重層ではならぶところまでを考える。
イオンが電荷を運ぶので、イオンが電解液中にいくつあるかによって容量の上限が推定できる。有機溶媒はおおむね
1リットルに1モルのリチウム塩を溶解できる。1モルの1価イオン電荷は、ほぼ10万クーロンにあたる。
単セルが1リットルの電解液を含むキャパシタを充電して2.5Vが満充電。すなわち10万クーロンの電荷を蓄えるとすると、図2に示すように、
Q=CV Q2.5=10万=2.5C
であるから、1.0Vまで放電したときは Q1.0=1.0C
放電電荷は Q2.5−Q1.0=6万クーロン
つまり放電容量は 6万クーロン=6万As=16.7Ah と計算できる。
この間の平均電圧は(2.5+1.0)/2=1.75V なので
エネルギ容量は 16.7*1.75=29.2Wh となる。
これを用いて、キャパシタシステムを概算してみよう。
電解液100リットルが一般の車輌搭載の上限として、
単セルに1リットルの電解液を含むキャパシタ100セルを直列に組み合わせて、
250V−100Vで使用するとき容量上限は 2.92KWh
すなわち 3KWh ぐらいを想定して、システムの大きさを見積もってみよう。
電解液が100リットルなので、この他に電極、セル容器、制御回路、DCDCコンバータ、リレーなどが付加されるので、
体積150リットル、重量 200Kg程度は必要と思う。
したがって、将来のシステム適用を考えるうえでの容量限界は下記といえそうである。
KWhあたり 50リットル 重量 70Kg
ここでシステムコストは 量産を前提に推定しても
電解液 ¥2000/l*100=¥200K
電極、セパレータ ¥250K
制御回路 ¥100K
パッケージ ¥50K
DCDCコンバータ ¥100k
組み立て、管理、流通 50% とすると ¥105万程度
KWhあたり ¥35万 が今後の目標
これ以上の容量向上のためには 電解塩の開発(多電価、高溶解度)、高電圧化のため安定な電解液開発、電解液のリザーバ追加、電極表面積増大など、技術課題が色々出てくるので、システムコスト面の見積もりは難しい。
以上より、耐用年数の比較的短い車両用としては、いまのところバッテリが適している。
キャパシタシステムは耐用年数の長い、スタンバイパワー型の電源や充電場所を巡る路線配送や、電車 バス 、産業機械などへの適用が向いているのではないかと思う。
|
|