転がり抵抗の性質
タイヤの転がりの抵抗は、大まかに以下のような特性を持っている。
@).荷重依存性 荷重にほぼ比例する。タイヤのたわみは荷重にほぼ比例するので、たわみに比例するともいえる。転がり抵抗を荷重で割った値は転がり抵抗係数(RRC)としてタイヤ性能の指標に利用されている。
厳密には、RRCは荷重が増加すると若干小さくなる傾向にある。
A).内圧依存性 空気圧に反比例する。タイヤは主に空気圧で重荷を支えているので、空気圧とたわみは反比例し、転がり抵抗とも反比例の関係となる。この関係は、規格の上限空気圧程度までは成立している。
しかし、実験的にさらに高い圧力を使用しても、転がり抵抗の低減はある程度で頭打ちとなる。これは、タイヤ変形が極端に減少しタイヤのボディー部分の寄与が減る一方、路面との接地圧力が高くなりトレッドゴムの
圧縮などによるロスが支配的になるためと考えられる。高内圧ではバネ定数の増大により乗り心地が悪化するほか、設置面積の減少からグリップも低下するので、適用内圧の設定は転がり抵抗と他性能のバランスで決める必要がある。
B).速度依存性 110km/h程度まではゆるやかに増加し、さらに高速になるとスタンディングウエーブ発生に伴い急速に増加する。数km/h以下の極低速では低めの値を示す。タイヤの最高速度は規格で定められており、例えばSレンジ(180km/h)に対して
Hレンジ(210km/h)のタイヤはより補強した構造になっているが、その結果100km/h以下では構造の簡素なSレンジの方が転がり抵抗が低いが、100km/h以上の高速ではSレンジは急速に抵抗が増加するのに対し、Hレンジは上昇がゆるやかで逆転する傾向にある。
C).温度依存性 ゴムのヒステリシスロスは温度が高いと減少するので、転がり抵抗もタイヤ温度の上昇とともに減少する。タイヤ温度は外気温度と、走行による発熱、周辺の空気やホイールを通じた冷却によって決まるので、走行開始から時間とともに変化する。
したがって、転がり抵抗を測定するにあたっては、慣らし走行を行い、温度が安定してから測定する必要がある。
D).タイヤサイズ(偏平率)の影響 タイヤサイズの偏平率(タイヤ断面高さ/タイヤ幅)が低い方が転がり抵抗に有利な傾向があり、例えば同じ構造、材料では60シリーズは70シリーズ比5%程度良くなる。偏平サイズではベルト(トレッド)部とサイド部の張力の分担で
ベルトの張力が増す結果、負荷時のタイヤ変形でのトレッド部の変形が減少するので、寄与の大きいトレッド部での損失が減少するためである。しかしながら、55シリーズ以下の超偏平サイズでは張力に耐えるようベルトを補強するため、転がり抵抗のメリットはあまり得られない。
経験的には65シリーズあたりが一番バランスがよく、低転がり抵抗とほかの性能のバランスを取りやすい。
出展
書名 電気自動車ハンドブック
著者 電気自動車ハンドブック編集委員会 編
出版 丸善株式会社 (URL http://www.maruzen.co.jp)
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