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ブレーキ制御

回生ブレーキ

電気自動車はガソリン車と比較して一充電走行距離が短いという欠点がある。これを補うひとつの手法として回生ブレーキがある。また、電気自動車に限らず ハイブリッド車の燃費改善の手法として用いられている場合も多い。

回生ブレーキとは、車両が走行時に保有している運動エネルギーを、減速時に他のエネルギー体として一時的に蓄え、加速時または走行時に運動エネルギーとして再利用することである。 その蓄えられるエネルギーの形態としては、フライホイールの運動エネルギーや、アキュームレータの蓄圧エネルギーなどの例(図5.142)も紹介されているが、一般的には走行用のモータを 減速時に発電機として作用させ、その時発生する電気エネルギーをメインバッテリ、あるいはキャパシタに蓄えるシステムが多い。

回生ブレーキはアクセルペダルやブレーキペダルまたは別スイッチによって制御を行っている。回生ブレーキ制御の実用例として、次のような方式がある。

アクセルペダルは走行時の力行トルクを制御するために使用されているが、これを走行中に緩めたり、あるいは完全にペダルを踏まない状態にすることで、回生ブレーキを作動させている。 つまり、ガソリン車のエンジンブレーキと同様な減速力を発生させるのである。この方式では、回生ブレーキを作用させるためにセンサや油圧ブレーキ力調整用のアクチュエータを新たに追加する ことがないため簡単な構成ですむが、あまり大きな制動力(回生ブレーキ力)を設定することができない。このためエネルギーの回収効率はあまり大きくできないといった背反する面がある。

フットブレーキとして回生ブレーキを使用する場合、自動車のブレーキは最大で1Gほどの減速度を必要とする。しかしながら電気自動車の回生ブレーキではモータやインバータあるいはメインバッテリの 能力に限界があるため、そこまで強力な制御力を発生させることはできない。そのため油圧ブレーキと併用している。

具体的な実用例として、トヨタのRAV4LV EVのブレーキシステム図を図5.143に示す。運転者がブレーキを踏むことで発生する油圧を検出し、その油圧に相当する制御力が得られるようモータに負のトルクを 発生させるようEV ECUがインバータに対して制御を行う。この時発生する電力をバッテリへ回収する。モータで発生させることができる制動力の範囲では、優先的に回生ブレーキを作動させ、油圧ブレーキ力は 回生ブレーキ強調制御バルブによって抑制される。こうすることで、摩擦熱によるエネルギーの損失を極力抑え、エネルギーの回収効率を向上させている。回生ブレーキ力の限界を超える制動力の要求があった場合は、 油圧ブレーキ力を発生させることで対応している。

また、ガソリン車と違い電気自動車には油圧ブレーキ力を増加させめ吸気の負圧源がないため、その動力源が必要となる。RAV4LV EVの場合は、電動油圧ポンプを用いて助勢を行うハイドロブースタを使用している。

制動時のエネルギーの流れは図5.144のようになる。できるだけ大きなエネルギーを回収するには各損失エネルギーを極力減少させることが有効である。トヨタのプリウスに搭載されている回生協調ブレーキシステム(図5.145)は、 油圧回路にリニアコントロールバルブを用い、車速やバッテリの充電状態によって変化する回生トルクに協調して油圧ブレーキを連続的に制御することで回生ブレーキをより有効に使用している。















出展
書名 電気自動車ハンドブック
著者 電気自動車ハンドブック編集委員会 編
出版 丸善株式会社 (URL http://www.maruzen.co.jp)