ノイズ
高周波スイッチング方式のDC/DCコンバータは小型・高効率の特徴があるが、原理的にノイズ発生源になりやすくノイズに対する配慮が重要になる。
ノイズは図5.139のように分類されるが、DC/DCコンバータのような大電力を扱う高周波スイッチングのコンポーネントは従来の内燃機関自動車には
なかったため、特に、EMI(electromagnetic interference)に対する配慮が従来以上に必要であり、ノイズ低減は大きな課題となる。
車両とDC/DCコンバータとの関係でみたノイズについて車載ラジオを例に説明する。日本のラジオ受信周波数帯には大きく分けて次の2つがある。
- AM帯ラジオ 周波数範囲522kHz〜1629kHz
- FM帯ラジオ 周波数範囲 76MHz〜108MHz
AM帯ラジオとFM帯ラジオとは上記のように周波数帯域が大きく異なり、DC/DCコンバータのノイズが問題になった場合は発生源が異なる場合が多く、
また伝導ノイズなのか放射ノイズなのかの見極めなど個々の対応が必要である。根本的にはDC/DCコンバータでの発生源対策が重要なことは言うまでもないが、
DC/DCコンバータの負荷には車両側の数多くの負荷が接続されており、また車両配線が複雑に配置されていることもあって、状況によっては車両システムとして
対策を進める必要がある。
さらに、自動車はユーザーが車両購入後に各種機器を取り付けて使用する場合も多く、例えばアマチュア無線の周波数帯域に対する配慮なども必要になり、
また使用する地域によっては長波、短波ラジオなどへの配慮が必要となる場合もある。最近は極超短波を利用した情報機器も増えており、このような機器への
配慮も必要である。電気自動車は主電池を充電するモードがあるが、この時もDC/DCコンバータを作動させることが、多く車両システムによっては充電器を介して
外部への伝導ノイズが問題になることもあるので注意が必要である。
次にEMS(electromagnetic susceptibility)について説明する。これは外部からの電磁ノイズに対してDC/DCコンバータが誤作動を起こさないことが原則であるが、
誤作動の現れ方にも各種症状がある。一例を挙げると車両のランプなどへの影響がある。外部からの電磁ノイズによりDC/DCコンバータの出力電圧が短時間低下することを
繰り返す場合、出力端に接続されたヘッドライトの輝度がちらつき運転者に不快感を与える恐れがある。実際の影響具合は車両により大きく変わるため、DC/DCコンバータ
単体の評価とともに車両での評価も重要となる。
出展
書名 電気自動車ハンドブック
著者 電気自動車ハンドブック編集委員会 編
出版 丸善株式会社 (URL http://www.maruzen.co.jp)
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