車両との適合
DC/DCコンバータは、車両の充放電収支を成立させ、バッテリ上がりを起こさないように、出力電流と出力電圧を十分に吟味して設定する必要がある。
また、最適な容量のDC/DCコンバータを選定することは、小型化、低コスト化のためにも不可欠である。
(1) 出力電流: 車両からの要求出力電流は、補機負荷の容量と走行条件による使用頻度などによって決まるため、どのような走行条件で要求出力電流を
見積もるかが重要である。そこで、いかにDC/DCコンバータの出力電流の考え方をオルタネータと比較して説明する。図5.138は、都市走行時のエンジン回転数
出現頻度分布の代表例であり、エンジン回転数に対するオルタネータの出力電流も合わせて示している。オルタネータはエンジンによって駆動されるため、
その出力電流はエンジン回転数に従って増加する。この図において、回転数N1(min−1)の出現頻度をλ1(%)、この時の出現電流T1(A)とするとオルタネータの
電流供給能力Te(A)は次式となる。
例えば、負荷電流値が45Aとすると、アイドル回転数700min−1ではオルタネータ出力電流は40Aであるから、不足分はバッテリからの放電でまかなっている。エンジン
回転数が800mim−1付近で負荷電流とオルタネータ出力とがバランスして、さらに回転数が上昇するとバッテリに充電することができるようになる。
オルタネータの出力電流を決める方法としては、走行条件などを加味して以下のようなものがある。
- 最大出力を夜間常用負荷の130〜150%とする。
- エンジンのアイドル状態での出力を点火系および燃料系の所要電流以上とする。
- 車速40〜50km/hのトップギヤ走行時の出力を夜間常用負荷以上とする。
- 大都市市街地走行モードでの実効出力を夜間常用負荷以上とする。
これに対してDC/DCコンバータは、エンジン回転数とは無関係に常時最大出力電流を供給できるため、走行状況に絡む上記ABCの走行パターンでの評価はあまり重要でなく、
最も負荷電流が大きい夜間常用負荷などを主に考慮する。
(2) 出力電圧: 出力電圧は、オルタネータと同様に補機バッテリの特性、車両配線などを考慮して決定する必要があるが、補機バッテリの寿命確保や冷寒時の
充電状態の改善のため、出力電圧を補機バッテリ温度の上昇とともに低下させる方法が一般的である。また、電気自動車では、一充電走行距離を伸ばすために、走行時と
充電時で出力電圧を切り換えることが行われる。この方法は、補機バッテリの充放電収支を走行時と充電字でトータルで考え、主機バッテリの充電時に出力電圧を高めに
設定することで補機バッテリも満充電状態にし、走行時は低めに設定し主電池の消費を低減させるというものである。
出展
書名 電気自動車ハンドブック
著者 電気自動車ハンドブック編集委員会 編
出版 丸善株式会社 (URL http://www.maruzen.co.jp)
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