電気自動車の駆動制御
電気自動車の駆動には望ましい車両特性を実現するために他の産業用途のモータ制御とは異なった特徴を持つ制御が必要とされる。すなわち
- 変速機を不要とするため、低速で大きな発進、加速トルクを持ち、中高速では、パワーが一定の形のトルク特性が望ましい
- ゼロスピードから他の機械要素がなくても発進が可能であること
- アクセルペダルで加速を制御し、また内燃機関車の運転に慣れたドライバーに違和感のない特性が必要である
- モータのみで後退運転が可能なことが望ましい
- 減速時の運動エネルギーをバッテリに戻す回生作動ができることが望ましい。
- 電池を電源としているため、電源電圧の変化が大きく、広い電圧範囲での作動が望ましい
エンジンはその特性から広い回転数範囲に渡ってフラットなトルク特性を持つことが多いことから、変速機およびクラッチなどと組み合わせて用いられ、図で示されるように低速では低ギア比で発進加速を稼ぎ、高速では高いギア比により低いエンジン回転での巡航が可能であるように変速がされている。一方でモータはその特性上低回転では一定トルク、中高速では一定パワーという特性を容易に作れることと交流モータでは高回転が得られるため減速は行っても変速機は一般には必要ない。またモータは容易に始動、停止が可能なため、エンジンのようなアイドリングや停止時に駆動系を切り離したり空転を許すクラッチのようなメカニズムは必要ないが、逆にゼロスピードから車両を動かすために停止時からトルクを発生することが必要であり、特に坂道で発進するため、登板能力に応じた始動トルクが必要である。
次にエンジンの特性としてエンジンブレーキがかかることが挙げられる。アクセルをゆるめることによって減速感を得ることは車両操作上も望ましいが、モータは本来このような特性を持たないため原則を制御的に作り出す必要がある。
さらにエンジンはアクセルすなわちスロットルを開くことでほぼトルクをスロットル開度に比例して発生することになり、またドライバーもアクセルに対して、このような期待を持ちながら運転している。そこで電気自動車においてもアクセルの踏み代に対してモータはトルクを比例的に発生することが好ましく、これゆえ電気自動車の駆動システムはトルク制御であることが望ましい。
出展
書名 電気自動車ハンドブック
著者 電気自動車ハンドブック編集委員会 編
出版 丸善株式会社 (URL http://www.maruzen.co.jp)
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