同期電動機の原理
図5.38に2極の交流電動機(以下同期モータ)の原理図を示している。この図は回転界磁型のモデルを表しており、ステータに電機子巻線が、ロータに界磁巻線が施されている。これに対して、ステータ側に界磁巻線を、ロータ側に電機子巻線をそれぞれ配置した構造を回転電機子型と呼ぶ。一般に、電機子よりも界磁の方が構造が簡単であり、界磁電圧や電流も電機子のそれより低いため、回転界磁型が主に採用されている。図に示したように、ロータに配した界磁巻線を励磁することでロータが電磁石となり、ステータに三相交流を流すことで発生する回転磁界に同期してロータが回転する。
図5.38のように界磁巻線を有するモータでは、回転するロータに励磁電流を通電するため、ブラシやスリップリングなどの機械的に摺動する通電部が必要となる。このロータの電磁石を永久磁石に置き換えたものがPMモータであり、永久磁石を用いることで励磁電流が不要となり、摺動部がなくなることにより構造的に堅牢になると同時に、励磁電流による損失が発生しないことから効率向上が期待できる。
電気自動車での実用例
乗用車タイプの電気自動車で、駆動用モータに同期モータを使用した代表的な例を表5.6に示す。現在までに、電気自動車に用いられた同期モータのほとんどが、PMモータであり、表5.6のモータもすべて希土類永久磁石を用いたPMモータとなっている。
普通乗用車クラスのPEVでは車重が1.5t以上となり、モータ出力として50〜70kW程度が要求される。このモータを1段の減速ギヤを含めて、小型一体化された駆動ユニットが搭載されている。これに対して、ここ数年の動向として特徴的なのは、トヨタe-comや日産Hyperminiなどのシティコミュータ的な小型PEVが発表されてきたことであり、2人乗りで車重も1t未満に抑えられており、比較的少容量のPMモータが用いられる機会が増えてきている傾向がある。
また、もう一つの特徴は、トヨタプリウスやホンダインサイトなどのHEVの台頭である。HEVでは駆動力をエンジンとモータで分配することと、バッテリ重量が軽減でき車重が抑えられることから、モータに要求される出力はPEVに比較して小さい。ここでも、小容量のPMモータが用いられる機械が増えてきているといえる。
以下、最近の代表的なPEVとHEVのPMモータの例について述べる。
出展
書名 電気自動車ハンドブック
著者 電気自動車ハンドブック編集委員会 編
出版 丸善株式会社 (URL http://www.maruzen.co.jp)
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