電気自動車に適したモータ
電気自動車で使用されるモータには、車両の駆動力から要求される出力特性を満足すると同時に、@車両への搭載性から小型軽量であること、A電気エネルギーを効率よく動力に変換し、燃料消費率、電力量消費率を低減するため高効率であること、B運転時の振動や、様々な温度条件・雰囲気で使用される条件で、信頼性が高く保守性に優れること、C低騒音であること、そしてなにより普及のためには、D低コストであることが要求される。
図5.1に示した車両の要求駆動力の包絡線に出力特性が合致することと、可変速制御が容易であることから、初期の電気自動車には直流モータが多く用いられたが、IGBT(insulated
gate bipolar transistor)をはじめとるる自己ターンオフデバイスの進歩によって、大容量のインバータが容易に適用できるようになったため、1990年前から交流モータの採用が主流になってきている。直流モータはインバータを用いずに可変速制御が可能であるため制御装置が簡単となるが、ブラシおよびコミュテータの存在から保守が必要となり、小型軽量化も機構上困難である。そのため電動カートなど用途によっては使われるが、今後も交流モータが主に発展していくものと考えられる。
モータの種類
モータには多くの種類があり、その分類方法や通称名称も様々である。その中で、電気自動車に適用可能と考えられるモータを分類したものを図5.9に示す。この図では、交流モータを通電電流派形によって、正弦波駆動と非正弦波駆動で分けて分類している。引用したオリジナルの図は交流モータのみの分類であるため、図では直流モータを追記してある。
上述したように、電気自動車用モータの開発対象は直流モータへと移ってきているが、交流モータの中でもかご形誘導モータと、回転子(ロータ)に永久磁石を使用した永久磁石形同期モータ(以下PMモータ:permanent
magnetモータ)が現在開発の主流になっている。
図5.9で示す非正弦波駆動の交流モータの中にプラシレスDCモータがある。このモータはPMモータと同時に、ロータに永久磁石を、固定子(ステータ)に電機子巻線を有している。主にサーボモータ用途で使われていたモータから発展してきており、直流モータすなわちDCモータのブラシとコミュテータの作用を、トランジスタなどのスイッチング素子に置き換えてきたことから、ブラシレスDCモータと呼ばれる。PMモータの一般的な駆動方式は、回転子位置に応じて正弦派状電流を与えるが、それに対してブラシレスDCモータでは回転子位置に応じて台形波状あるいは方形波状の非正弦波電流を与える駆動方式を用いる。このようにインバータの駆動方法により様々な電流波形を用いている点では異なるが、PMモータとブラシレスDCモータは構造上は同じモータであることからここではPMモータとして統一して扱う。
出展
書名 電気自動車ハンドブック
著者 電気自動車ハンドブック編集委員会 編
出版 丸善株式会社 (URL http://www.maruzen.co.jp)
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