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リチウムイオン2次電池

リチウムイオン2次電池(LIB)の電圧は他の2次電池に比べて高く、初期開路電圧は4.2V、平均動作電圧は3.6〜3.7Vである。EV用電源システムは非常に高い電圧で構成されるが、この場合、電池電圧が高いという点は非常に有利になる。たとえば、360Vのシステムを作るには、ニッケル・カドミウム電池(NiCd)やニッケル水素電池(NiMH)では約300本、鉛畜電池でも約160本のセルを直列接触しなければならないのに対し、LIBでは約100本で済む。直列接続では、システムを構成している個々のセルの放電容量のばらつきが大きいと、最も容量の少ないセルから順に過放電となり、いわゆる転極が起こる。これを防ぐために、個々のセルを制御回路により監視することが行われるが、直列接続本数が少ないほど監視が容易である。

LIBはエネルギー密度、特に、重量エネルギー密度が大きいので、車体総重量をできるだけ軽くしたいというEV用電源の要求に適している。ポータブル電子機器に使われている小型のLIBでは、体積エネルギー密度で400Wh/dm3、重量エネルギー密度で170Wh/kg程度にまで到達しているといえる。他の条件を一定と考えた場合、一充電走行距離を同じにするためには、EV電源システム総重量については鉛畜電池ではLIBの約3倍、NiMHでは1.5倍程度にする必要があると見積られる。

充放電効率が高く、エネルギーの有効利用が可能な点もLIBの大きな特徴である。クーロン効率は100%に近く、その他の電池システムを利用したEVに比べて、LIBを用いると総合エネルギー効率を高くできるという試算がある。(図)

自己放電率が水溶液電解質電池に比べて低いのもLIBの有利な点である。すなわち、常温で10%/月以下であり、これはNiMHの2分の1以下である。自己放電は、ガソリン車にたとえればガソリン・タンクから燃料が漏れることに相当するので、少ないことが望ましいというのはいうまでもない。

NiCdやNiMHでは、フル充電またはそれに近い状態で長時間保存すると電池の放電可能時間が短くなるという現象が存在する。これをメモリ効果と呼び、フロート充電やトリクル充電を続けてもこの現象が現れる。この場合には、残存容量表示はフル充電を指しているのにもかかわらず、実際の放電可能時間は非常に短いという状況となる。メモリ効果はガソリン・タンクの底に砂などが推積して、燃料ゲージはFULL を表示しているのに、実際にはガソリンが残り少ないという状態にたとえられる。

メモリ効果は電池をいったん完全放電すると解消されるので、小型のNiCd、NiMH用の充電器では、充電前に電池が完全に放電されるように強制放電回路(リフレッシュ回路などと呼ばれている)を設けている。一方、LIBにメモリ効果は全く存在せず、このような面倒な充電方法は不要である。



出展
書名 電気自動車ハンドブック
著者 電気自動車ハンドブック編集委員会 編
出版 丸善株式会社 (URL http://www.maruzen.co.jp)